ヒタスタイルコラム再録 51 2018年5月号掲載 春のお裾分け
昭和の時代、4月のお花見が終わったくらいから玄関に新聞紙に包まれた一升瓶くらいの大きな包みが置かれていることがある。
そのうち電話があり「おらんかったき、おいちょったばい」中身は筍。
初物をいただいた母親は張り切って皮をむき,アクを取るために米のとぎ汁で煮る。
翌日にはドアノブに何か焦げ茶色の細長い物体でパンパンに膨れ上がったレジ袋がかけられている。
そのうち電話があり「ツクシが取れすぎたきおすそわけばい」と初物に喜びながらもハカマ取りの作業に想いを馳せ少々憂鬱になる母。
そうこうしているうちに次の日曜日にはまたツクシが違う方からも届く、流石にハカマ取りで黒くなった爪を眺めながら思いきったように、お隣さんへとおすそわけ。
しかし戻ってきた母の手には大きな筍が。
再びのアク抜き作業が待っている。永遠のおすそわけループ。
最近では少なくなったが昔は勝手に玄関に筍やら、ワラビ、ゼンマイ 、ツクシ、タラの芽やコシアブラの山菜を置いていって、食卓を賑わせたが、小・中学生の我々は苦味や、エグミを感じてそんなには嬉しくなかった。
それが大人になってお酒を飲めるようになると、この辺の苦味やエグミの旨さを感じられるようになる。
もうタラの芽なんかは最高のおつまみだ。
話はそれるが結構最近まで「ダランメ」だと思っていた。
タラの芽 ではなくワンセンテンスで「ダランメ」という食材だと思っていた。
実際にそう発音してる方がほとんどだった。
まぁ「た」が濁ってあとは日田弁なんだけど食材としては「ダランメ」だと。
昔ほどではないが、飲食店をやってるとお客様からも山菜や筍をいただく機会が多い、喜び勇んで帰ると、同じような包みが冷蔵庫に、近所の方が持って来てくれたらしい。
平成も終わろうかとしている21世紀でもこういったコミュニティととれたての山菜が残っている日田、ステキな街だ。
Kiyo
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