日田スタイルコラム再録 34 夕方のにおい 2016年12月号掲載
早いものでもう師走、という書き出しが日本全国のコラムで交わされる時期になってきました。
一年も早いが日の落ちるのも早くなってくる、冬至という一年で一番昼の短い日があるのも十二月。
外で遊ぶのが常だったその昔の小学生にとっては夕方が早いのは死活問題。5時には帰っておいでとフライパンマザー、サイレンが帰宅の合図。
それでも、盛り上がってるやわボール野球や、缶蹴りが五時ちょうどに終わるわけでもない。キリがいいところまでやろうという事になるのは仕事も遊びも同じ。
野球なんかは決着がつくまで暗くなってもボールを追いかけていた。 キリがつき肌寒くなった薄暗い街を家路につく。
そんな時、家々の明かりがやけに暖かそうで、ふとそこから漂ってくる夕食の準備の匂い。何かを煮込むような、湯気を感じさせるような、早く家に帰りたくなるような、なんだか寂しくなるようで、ホッとしてお腹の減り具合を再確認させてくれるようななあの匂い。
あの匂いを嗅ぐと何故だかみんな早足になり、最後には駆け足で家路につく。
それぞれの曲がり角で走る速度を弱めないままバイバイ。一人になっても走るペースは変わらないどころかペースアップして家へまっしぐら。
飛び込んだ家では遅くなった小言と早く手を洗ってと急かされ、夕食が並んだコタツに滑り込む。爺さん婆さんが待ってましたとばかりに一緒に食卓を囲む。
大人になって、どこかの街角でふとした時にあの匂いを感じる時がある、その瞬間あの切ないような気持ちまで思い出す、いやあの気持ちそのものになる。匂いって不思議だ。
そして、そんな夕方と夕焼けを楽しむ期間限定屋形船バーが三隈川でオープンしています、私のお店ステップスも、豆田のバヒーオさんとローテーションでお手伝い致します、皆様も夕方の刹那と絶景を味わいに一度足をお運びくださいませ。
Kiyo
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