ヒタスタイルコラム再録 38 お習い事 2017年4月号掲載
お習い事といえば、習字か算盤だった。
昭和の時代、字は綺麗な方がいいし商売するなら算盤は絶対という事で小学生の習い事はこの二つが二大巨頭。
ピアノ、ラグビー、サッカーなども勿論あったがこの二つプラスして何か習う感じ。
野球は近所のにいちゃん、水泳は川が先生、学習塾は少数派。
てな訳で半ドンの土曜日の午後からやってる習字教室に友達と二人通い始めた。
同じ校区の子がたくさん通い入選者もバンバン輩出してる所は避け、割とゆるい感じの教室を選んだ。
親も今と違い習字でプロにさせようとか、県に入選させようとかは微塵も思ってなく。
遊んでばかりいるぐうたら長男にせめて習字か算盤のどちらかは習ってくれくらいの感じ。
そういう感じなので、友達が行けない時などは他校生もいる教室に行くのが億劫でサボっ教室の近所の草むらでバッタを追いかけていた。
当然何食わぬ顔で帰宅したが教室から連絡があってて親からお目玉。
それにしてもあの時代は小学生が土曜日の午後行くはずの習字教室にも現れず夕方まで家に連絡もナシなんて状況でも、警察に連絡しなければならない状況を想像しなくてもいいような安全な世の中だった気だがする。
習字教室もサボってはいながらも、いい字が書け赤い墨汁で5重丸なんて貰えば小学生は単純に嬉しかった。
月に一度大分県習字にお題の作品を送れば、自分の等級が解る冊子が送ってくる8級くらいから始まりだんだん級が上がって行く喜びもあった。
今考えれば大体の子は月に一級づつ上がっていき下の級に落ちることなんかなかったので、字のみでの判断でなく十二分な教育的配慮による級付けだったんだろう。
その月の優秀な字はその冊子の巻頭グラビアに選ばれる訳だがウチの教室の仲間は載ることもなく、例の人気の教室の子は度々巻頭グラビアを飾ってた。
アレから四十年。今では年賀状やお熨斗もコンピューターがやってくれる、計算は携帯電話で充分だし複雑な計算もコンピューターにお任せしてる。
たった四十年でだ。
今話題のAI人工知能、それの普及によって将来無くなるであろう職業リストなるものが発表されてたが、生きてる間にそんな世の中を体験できるのかもしれない。
その頃はもう老人でAIロボットに年賀状を書いてもらい、年金の計算をしてもらい、お風呂にも入れてもらいながら、習字をサボってバッタを追いかけたあの草むらの光と匂いを思い出すのかもしれない。
Kiyo
最新記事 by Kiyo (全て見る)
- ヒタスタイルコラム再録 71 2020年1月号掲載「御節料理と親戚」 - 2024年6月27日
- サントリー角瓶 復刻版入荷! - 2024年6月23日
- ヒタスタイルコラム再録 70 2019年12月号掲載 「年賀状」 - 2024年6月22日
- 山崎 Story of the Distillery 2024 EDITION 入荷! - 2024年6月21日
- 瑛人君 ライブ決定! - 2024年3月15日