2018年5月31日日アーカイブ

傘がない

傘がない

ヒタスタイルコラム再録 28 傘 2016年6月号掲載

都会では自殺する若者が増えてきた氷の世界では君に会いに行けない理由が、傘がないことだった。

 

近ごろ、特に安価なビニール傘が登場してからは傘のデフレ状態で、どこにでもあるし邪魔にもなる。テレビが寒さで画期的な色になるような部屋にも2.3本の傘は転がってるだろう。

 

梅雨どきになると昭和の小学生は朝雨が降ってよういまいが、傘を持たされた。 ちゃんと登下校時に雨が降れば良いのだが、帰りに晴れようものならそれは恰好の遊び道具になる。

少し前に終わった観光祭の指揮者やバトンのマネならいい方。

ゴルフクラブやバットの代わりにやわボールを打つ。竹刀の代わりに勝負を挑む。

変わりダネはフェンシングの剣、なぜか闘いながら傘を広げてディフェンスするという小学生特有のマイルールを開発し、最後にはお互いが傘を広げながら闘うという新しい競技にまで発展させる。

 

雨で水かさが増えた小川では笹舟競争をする、傘で波を起こし自分の船に勢いをつけるも波に揉まれ沈没したり逆に相手の船に勢いをつけてしまったり、まさに人生。

そう我々川の子は、人生は紙飛行機ではなく小川を流れる笹舟だと学んでいく。 遊び疲れた帰り道では前を歩く友達のランドセルに傘の柄を引っ掛け引っ張ってもらう、それでも疲れてくるともう道に傘の先っぽをつけ引きずりながら家に着く、ボロボロになった傘を見て親に怒られる「モノを大切にしなさい!」

そろそろ、一生使えるような傘を一本持つのもいいのかもしれない。

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